輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

しゃよう

斜陽

太宰 治

線上閱讀太宰 治《斜陽(しゃよう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 頁

青空文庫

、それに上原と書かれているような気がして、片足は足袋はだしのまま、その家の玄関に走り寄って、なおよく表札を見ると、たしかに上原二郎としたためられていたが、家の中は暗かった。

どうしようか、とまた瞬時立ちすくみ、それから、身を投げる気持で、玄関の格子戸に倒れかかるようにひたと寄り添い、

「ごめん下さいまし」

と言い、両手の指先で格子を撫でながら、

「上原さん」

と小声で囁いてみた。

返事は、有った。しかし、それは、女のひとの声であった。

玄関の戸が内からあいて、細おもての古風な匂いのする、私より三つ四つ年上のような女のひとが、玄関の暗闇の中でちらと笑い、

「どちらさまでしょうか」

とたずねるその言葉の調子には、なんの悪意も警戒も無かった。

「いいえ、あのう」

けれども私は、自分の名を言いそびれてしまった。このひとにだけは、私の恋も、奇妙にうしろめたく思われた。おどおどと、ほとんど卑屈に、

「先生は? いらっしゃいません?」

「はあ」

と答えて、気の毒そうに私の顔を見て、

「でも、行く先は、たいてい、……」

「遠くへ?」

「いいえ」

と、可笑しそうに片手をお口に当てられて、