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あたらしいぶんがくのたんじょう

新しい文学の誕生

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《新しい文学の誕生(あたらしいぶんがくのたんじょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,325 字 · 13 頁

青空文庫

衣、食、住、愛憎の問題だけを見ても、戦争中は、人間的な欲求の一切を抹殺した権力によって、そういうテーマは、すべて自然の文明的な主張をかくし、軍国主義への献身だけが強調された。小説にしろ、そうだった。大衆のこのみは、そこに追いこまれ、すべての出版物がそういう傾向であった。

だから、そういう時代に本をよみはじめる年ごろになった若いひとたちは、偶然よんだ小説が、竹田敏彦であったり、尾崎士郎の従軍記であったり、火野葦平の麦と兵隊であったりした。本をよむことそれ自体が、一人の人間の生活の環のひろがりを意味するし、心の世界の拡大を意味することは、ゴーリキイの思い出に云われているとおりだから、あの時代、ひとは、一冊の本をよめば、よむほど、その偶然によって戦争気分へひきこまれた。戦争について考え直して見ようとする本、戦争について日本の権力が語るひとりよがりを不審とする論文、そういうものは発表されなかったのだから。

さて、戦争が終って、ポツダム宣言が受諾され、日本は人民の幸福のための民主国にならなければならないことになった。三年経った今日、わたしたちの周囲に、いまはじめて、文学にふれてゆく人のために、最も多い偶然として氾濫している雑誌、小説類は、どんな種類のものだろう。