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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
線上閱讀林 芙美子《新版 放浪記(しんぱん ほうろうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 頁
私の番ではなかったけれども、あのひとに金のない事は判りきっている。胸のなかが酢っぱくなって来る。
勝美さんがほおずきを鳴らしながら酒を持って行った。私は腰から下がふわふわとして来る。そっと勝美さんを裏口へ呼んで、あのひとは私の知ってるひとで金がないのだからと云うと、勝美さんはのみこんで表へ出て行った。私はそのまま遊廓の方へ歩いて行く。畳屋の管さんに逢う。何処へ行くンだと云うから、煙草買いに行くンだと云うと、管さんは、寿司をおごろうと云って、屋台寿司に連れて行ってくれた。管さんは新内のうまいひとだ。西洋洗濯屋の二階に、お妾さんを置いていると云う風評だった。
ゆっくり時間をとって、帰ってみると、まだ野村さんはいた。そばへ行って話す。酒を飲み、焼飯を食って、平和な表情だった。私は、どんな犠牲もかまわないと思った。
十時頃野村さん帰る。
土のなかへめりこんで行きそうな気がした。愛情なぞと云うものはありようがないのだと自分で気づく。
(二月×日)
朝、大久保まで使いに行く。家賃をとどけに行くのだ。いくらはいっているのか知らないけれど、ふくらんだ封筒を見ると、これだけあれば一二カ月は黙って暮らせるのだと思う。