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しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

線上閱讀林 芙美子《新版 放浪記(しんぱん ほうろうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 頁

青空文庫

」

お計さんは歯ブラシを使いながら大声で呼びたてると、やがて秋ちゃんは手拭で胸を隠しながら、そっと二坪ばかりの風呂へはいって来た。

「お前さんは、赤ん坊を生んだ事があるんだろう?」お計ちゃんがそんな事を訊いている。

庭は一面に真白だ!

お前忘れやしないだろうね。ルューバ? ほら、あの長い並木道が、まるで延ばした帯皮のように、何処までも真直ぐに長く続いて、月夜の晩にはキラキラ光る。

お前覚えているだろう? 忘れやしないだろう?

…………

そうだよ。この桜の園まで借金のかたに売られてしまうのだからね、どうも不思議だと云って見た処で仕方がない……。と、桜の園のガーエフの独白を、別れたあのひとはよく云っていたものだ。私は何だか塩っぽい追憶に耽っていて、歪んだガラス窓の大きい月を見ていた。お計さんが甲高い声で何か云っていた。

「ええ私ね、二ツになる男の子があるのよ。」

秋ちゃんは何のためらいもなく、乳房を開いて勢いよく湯煙をあげて風呂へはいった。

「うふ、私、処女よもおかしなものさね。私しゃお前さんが来た時から睨んでいたのよ。だがお前さんだって何か悲しい事情があって来たんだろうに、亭主はどうしたの。