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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (上)(めいじびじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,076 字 · 256 頁
人世の嵐――この二人の上にも、ふと曇った影がさしたこともあるにはあったが、それは世間の面白がりが、待ちかまえていた二人の心の溝ではなく、愛の結晶の長男を早世させたことと、明治卅三年頃の相場の不況に失敗し、二女をかかえて洗い晒しの浴衣一枚になったことだった。その当時こそ多少陰惨の影はもって来たものの、かえって二人の心はぴったりと合い、綾之助貞淑の床しい語り草とも残された。卅七、八年の日露戦争ごろには、芽を出して、家庭は豊かになった。綾之助はこのおりこそと木戸銭がわりに手拭二筋ずつ客に持ってきてもらう演芸会を開き、二日間に二万本を集め得て恤兵部におくった。
時の歩みの早さ、家庭にかくれた綾之助に十年の月日は経った。四十二年の二月に女義界の紛擾の仲裁にたった羽目から、睦、正義の両派によらず独立して芸界に再来することになった。時の進むことの早さ、綾之助の堂摺連はみんな紳士中産階級以上の人になり、時世の潮流もおしなべて向上した。再起の綾之助の語り口も、以前の浮気な人気ではなく、完く価値あるものとして価値附けられ、真に噛みわけた人生の味を、期待された。
――大正七年四月――