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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (上)(めいじびじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,076 字 · 256 頁
塩原へ行く道を通っただけの記憶でも、那須は栗の沢山あるところだと思いました。小さな、一尺二、三寸の木の丈で、ほんの芽生えなのに青い栗毬をつけていたことを思い出します。
昨夜は、もう入梅であろうに十五日の月影が、まどかに、白々と澄んでおりました。夏の月影の親しみぶかさ――そんなことを思いながら眺めておりました。そちらの月の夜は、夜鳥もさぞ鳴きすぎることでございましょう。月明に、夜空に流れる雲のたたずまいもさぞ眺められることで御座いましょう。そして静寂な中に、ともしびをかこんで、お子様がたのおだやかな寝息に頭をまわしながら、静かに、あなたがたは何をお読みになっていらっしゃるか、何をお思いになってお出であろうか、または、何についてお談話をなされてであったろうかと、ふと何ともいえぬ懐しみが湧き上りました。
らいてうさま、あなたのお健康は、都門を離れたお住居を、よぎなくしたでございましょうが、激しい御理想に対してその欲求が、時折何ものも焼尽す火のように燃え上るおりがございましょう。けれどもまた、長い御一生に――あなたばかりでなく、お子様がたにも――おだやかな、滋味のしたたるような今の御生活が、しみじみと思い出されるおりがあろうと思いますと、只今の楽しいお団欒が、尽きない尽きない、幸福の泉の壺であるようにと祈られます