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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (上)(めいじびじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,076 字 · 256 頁
一時頃には女の方は腹痛だといって俯伏しになって、十銭の振りだし薬を買わせて服んだりした。男の方は女中にむかって、芸者を招んでくれといってきかなかったが、女の方がしきりに遮って止めた。午後三時ごろ支払いをすませて、二人は勢いよく袖をつらねてその家の門口を出た。
その夜、鎌子を引倒した列車に乗っていた機関手は、その刹那の模様を語った。
「私の列車が進んでゆくと、男女は確乎と抱きあい、一つになって蹲まっていたところから変だなと思っていると果然件の男女は抱きあったまま線路に飛び込み、あわやと思う間に男女共一緒に跳ねとばされたが、女は倒れたけれども男はあまり負傷もしない様子で、女の上に乗りかかり泣きながらやや高い声で、『貴女一人は殺しません。私も死にますから御安心なすって下さい』と頻に女の耳に口をあてて言っていたが、その中多勢の人が騒ぎだしたので、女から離れて女子師範学校の土手のとこに行って喉を突いたのです」
生命危篤の彼女は、出血の多量であったにもかかわらず命はあることになった。「死んでしまったらよかったろうに」とは、あながち彼女を憎むものばかりが言ったことではなかった。