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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (上)(めいじびじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,076 字 · 256 頁
俗に大音寺前という場処で、吉原の構裏であった。一葉の家は京町の非常門に近く、おはぐろ溝の手前側であったという。ここの住居の時分から、女史の名は高くなったのである、そして生活の窮乏も極に達していた。荒物店をはじめたのも此家のことであれば、母上は吉原の引手茶屋で手のない時には手伝いにも出掛けた。女史と妹の国子とは仕立ものの内職ばかりでなく蝉表という下駄の畳表をつくることもした。一葉女史のその家での書斎は、三畳ほどのところであったという。荒物店の三畳の奥で、この閨秀の傑作が綴りだされようと誰が知ろう、それよりもまた、その文豪が、朝は風呂敷包みを背負って、自ら多町の問屋まで駄菓子を買出しにゆき、蝋燭を仕入れ、羽織を着ているために嘲笑されたと知ろうか。彼女の家から灯が暁近くなるまで洩れるのは、彼女の創作のためばかりではなかった。あの、筆をもてば、倏忽に想をのせて走る貴い指さきは、一寸の針をつまんで他家の新春の晴着を裁縫するのであった。半日に一枚の浴衣を縫いあげるのはさして苦でもなかったらしいが、創作の気分の漲ってくるおりでも、米の代、小遣い銭のために齷齪と針をはこばなくてはならなかったことを想像すると、わびしさに胸が一ぱいになる。