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りょしゅう

旅愁

横光 利一

線上閱讀横光 利一《旅愁(りょしゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 576,941 字 · 1138 頁

青空文庫

そして、暫くはあの河、この水と思うまにまに泛んで来る海港や、ロザンヌ、フロウレンスと連って来る、水上の灯火がしだいに幻のように閃きわたって来るに随い、も早や異国の匂いの脱けきれぬ自分の身の漂いを感じ、旅の愁いはこうしてこれから行く先ざきの自分に、深まり続いてゆくのみであろうか、もうこれは、自分からは取り去ることは出来ないのだろうか、と歎いた。

その夜、矢代は帰りのタクシで千鶴子の家の方を是非廻ってみたくなった。店が日本橋にあり本宅が目黒と聞いていたから、目黒の方なら廻りもそんなに遠くはなかった。しかし、彼は車の中で、もう会うまいと決めていた千鶴子に、着いたこの夜、会わずにいられぬ自分が寂しかった。いつかは耐えきれぬものであるなら、明日か明後日を待つのも良いと思われるのに、この夜でなければ明日もないと思うのが寂しかった。そして、「追えども去らぬ夢幻し」と悩んだ古人の呟きが、彼の口から自然に出た。

運転手に教えた番地も近よって来ると速力も鈍った。大きな樹木の立ち並んでいる屋敷街は、どの家も鈍い灯だけ残してみな門を閉めていた。幾曲りも同じような小路を折れて入る中に交番があった。