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にほんのこころ

日本のこころ

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《日本のこころ(にほんのこころ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,988 字 · 16 頁

青空文庫

当時の日本の中流階級の下というところの代表者であろう。その男が『三四郎』をのぞき込みながらきいた最初の言葉が、「この頃はお国でもそういう字が流行りますか」というのであったそうである。

エリセーフ氏には、この言葉がよほど気に入ったものとみえて、三十年後の今日、この話をするエリセーフ氏の語調の中には、当時の日本をしのび、自分の青春をなつかしむ情が、脈々として流れていた。そして「日本はいい国でした」と、独り言のようにつけ加えていた。

「お国でもそういう字が流行りますか」というのは、如何にも面白い言葉である。こういう質問に腹を立てる人は恐らくないであろう。馬鹿げているようで、しかし何か温かいものが、その底に感ぜられるからである。しかしその意味は、考えてみると、かえって分らなくなる。エリセーフ氏が外国人であることは、一眼に分ることである。現代の日本人ならば、「あなたは日本字が読めるのですか」ときくだろう。しかしそれは愚問であって、さっきから外の景色にも、車内の様子にも、まるで無頓着で、夢中になって読み耽っているのだから、日本字の読めることは、きくまでもないことである。