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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本の怪談(ぎじんのすがた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 56,030 字 · 115 頁
次郎兵衛はこう云って嘲笑った。
「いや元親公の仰には、左京之進殿ことは、悪逆があったから切腹さしたが、勝賀野次郎兵衛にお構いなく、所領安堵である、ただ左京之進殿の城後(しろあと)を受取り来れとのことでござる」
勝行はこう云って次郎兵衛に安心さして、その隙に乗じようとした。
「元親公がそんなことを云われたか、凡そ君辱めらるれば臣死す、禄を食(は)む者が、主を殺させて安閑と生きながらえることができると思われるか、元親公は無下(なげ)に愚かな人じゃ、飴で小供を釣るような申されようじゃ」
次郎兵衛は肩を揺って笑った。笑いながら体に隙を見せなかった。
勝行等は隙を待っていた。双方の間は殺気立っていた。次郎兵衛は静に大刀を抜いて前へさしだした。
「これは、進士太郎国光の作でござる、これを抜き合すと、方々が幾人かかって来ても手には覚えん」
と云って、にっと笑って鞘に収めた。そして、また脇差を抜いて、それをまた前へだした。
「これは奥州月山と云う名工の鍛えた吹毛でござる、これを抜き合すと、方々の五人や十人は胴斬りにできるのじゃ」
次郎兵衛はこう云って、またその脇差を鞘に収めた。