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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《日本婦道記(にほんふどうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,765 字 · 21 頁
すっかり夏になって照りつける日が続いた。その夜はひどく蒸して蚊が多かったので、菊枝はそっと庭へ出て夜気をいれていた。まわりは萩の茂みで、その向うに父の居間がみえ、話しごえがしていた。――そうだ、蜂屋さまが来ていらしった。そう思いながら、聞くともなしに惘然としていると、「登野村」というのが耳についた、菊枝はどきっとして耳を澄ました。
「つねづね千坂どの腹心の男だからおそらく唯では済まぬでしょう、いま考えると離縁したことはかえって幸いでした」
「幸いと申しては悪いが、やっぱりそうだったのかな、少しようすが落ち着かぬとは思っていたのだが」
「唯では済みません」
伊兵衛がしきりに強調した、
「これは相当に思いきった処置があります、きっと離縁していてよかったと思い当るときがきますよ」
菊枝にはなんのことかわからなかった、しかしなにか重大なことが起こったらしい、そして登野村にもその累が及んでいるとみえる、いったいなにごとかしらんと菊枝はにわかに心がさわぎだした。……真相は間もなくはっきりした、それは執政千坂対馬はじめ、色部修理、須田伊豆、長屋兵庫、清野、芋川、平林という七人の重臣が連袂して御しゅくん治憲を強要したという事件であった。