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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《日本婦道記(にほんふどうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,743 字 · 22 頁
そう云ってそよははらはらと泣いた。藤右衛門はもういちどそこにある衣類をとりひろげてみた。洗い清めてはあった、どんなちいさなやぶれ目にもきちんと継があててあった、けれどもかたみわけとしてひとに遣るには、あまり粗末な品々である。藤右衛門はまだ茫然とした気持からさめることができず、ふりかえって格之助の顔を見た。
「これでは、いかにもみぐるしすぎるように思うが、どうか」
「母上が身におつけになった品ですから、お遣わしになってよろしかろうと存じます。わたくしも一枚、なみに頂戴いたします」
格之助はそう云って、まず自分から古びた袷を一枚ぬきとった。それで藤右衛門もはじめてそよに頷いてみせた。
「ではよいようにわけてやれ」
「かたじけのう頂戴つかまつりまする」
そよはすり寄って、その衣類を敷居ぎわまではこんだ、そして次の間に平伏している女房たちにむかった、しずかに涙を押しぬぐいながら云った。
「旦那さまのおぼしめしで、亡き奥さまのおかたみわけをいたします。……おまえさまたちも知っているとおり、つねづね奥さまはおそれおおいほど、つましいくらしをあそばしておいででした。これまでわたくしたちお末の者が、祝儀不祝儀につけて頂いたものは、それぞれ新らしくお買い上げになった高価な品ばかりでした。