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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《日本婦道記(にほんふどうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,841 字 · 25 頁
すべての人が去って、はじめて二人だけになったとき、老母はそっと由紀の手を取って「ありがとうよ」と云った。どのような念いをこめたひと言だったろう。どんなに巧みな云いまわしも、そのひと言のもつじかな真実のこもった感じには及ばなかったに違いない。あたりはひっそりとしていた、きびしく切迫した騒がしさのあとで、にわかにしんと静まりかえった家の中に、朝の光がしらじらしいほど明るくさしこんできた。その爽やかな光はまるでこの家の不幸のたしかさを証するかのように思え、泣いてはいけないとがまんしながら、由紀はどうしても泪を隠すことができず、「ふつつか者でございます、どうぞ色いろお叱り下さいまして……」
そう云いかけたまま噎びあげてしまった。
すべては謎をつないだような感じだった。祝言をひかえた家へ帰る途中で、婿たるべきその人が重傷を負って倒れていた。それは三の丸から武家屋敷へかかる家のとだえた寂しい処で、道の片側が藪になっており、俗に大藪といわれている、休之助はその藪の蔭に倒れていたのだ。右の手に抜いた刀を持っていたが、その切尖が僅かによごれているだけで、かくべつ人と闘争したという風にはみえなかった。