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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《日本婦道記(にほんふどうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,841 字 · 25 頁
三
わかっている事実はそれだけである。譫言のようにもらした「腹を仕損じた」という言葉のほかに当人がなにも云わないし、また見ていた者がないのだろう、どこからもそれらしい噂は立たずじまいで、なにもかも模糊とした霧に包まれたままだった。事情が事情なので見舞い客はみんな玄関で帰って貰った。休之助は命はとりとめたが、医者は人との面談を暫く禁じたのである。けれども七日になって、思いがけなく御納戸がしら沢本平太夫が訪ねて来た。そして「御用筋のはなしだから」といって寝所へとおり、かなりながいこと休之助となにか話していった。……見舞いではなくて、納戸がしらみずから来るというのは尋常のことではない。なほ女は不安に堪えかねたようすで、平太夫が帰るとすぐ枕許へいって仔細を訊ねた。休之助はいつもの穏やかな調子で、まじまじと天床を見やりながらこう云った。「少し失策を致しました、ことによると御迷惑をかけるかも知れませんが、母上はなにも御心配なさらないで下さい、なに、そう大きな事ではないのです、みんなうまくおさまるだろうと思います」
そしてそれ以上はなにを訊いても答えなかった。
三
その夜のことである、更けてからそっと寝所を見舞うと、休之助が眼でこちらへ来いと知らせた。