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にほんばし
日本橋
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《日本橋(にほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 88,697 字 · 177 頁
直ぐに稲葉家の露地を、ものに襲われた体に、慌しく、その癖、靴を浮かして、跫音を密めて、したしたと入ると、門へ行った身を飜して、柳を透かしながら、声を忍んで、二階を呼んだ。
「お孝さん、……」
寂然としていたが、重ねて呼ぶのに気を兼ねる間も無く、雨戸が一枚、すっと開いて、下から映す蒼い瓦斯を、逆に細流を浴びたごとく濡萎れた姿で、水際を立てて、そこへお孝が、露の垂りそうに艶麗に顕れた。
が、それは浴びるばかりの涙なのである。
と、見る時、葛木も面にはらはらと柳の雫が、押えあえず散乱るる。
今宵は三度目である。宵に来て、例のごとく河岸まで送られて十二時過に帰った時は、夢にもこうとは知らなかった。――一石橋で赤熊に逢って、浮世を思捨てるばかり、覚悟して取って返した時は、もう世間もここも寐静まっていた上に、お孝は疲れた、そして酔ってもいた。……途中送る折も、送る女が、送らるる男の肩に、なよなよと顔を持たせて、
「邪慳だね、帰るなんて。」
ぐっすり寐込んだに相違ない。ええ、決心は鈍ろうとも、ままよ、この次に、と一度引返そうとして、ただ、口ずさみのひとりでに、思わず、