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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

線上閱讀和辻 哲郎《日本精神史研究(にほんせいしんしけんきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 頁

青空文庫

この傾向は連想の許す限りあらゆる言葉に現われてくる。「濡るる」と言えば雨露に濡れるとともに涙に濡れることを意味し、「まどふ」と言えば、道に迷う、恋に迷う、「せく」と言えば、水をせく、感情をせく、「燃ゆる」と言えば、火が燃える、思いが燃える、――それはさらに『古今』以後に複雑化され、徳川時代に至って極点に達する傾向ではあるが、しかし本来感覚的、具象的である言葉を初めて情緒の表現に転用したのは『古今』の歌人である。もとより『万葉』の歌人も言葉の多義性について全然無関心であったのではない。しかしそれは多くの場合言葉の多義性そのものに対する興味であって転用ではない。

わが背子をこちこせ山と人は言へど君も来まさず山の名ならし  (巻七、雑)

わたつみのおきつ玉藻の名のりその花妹と吾とここにしありと名のりその花  (巻七、雑、旋頭歌)

明らかにこれはこちこせ(此方に来らせ)、名のりそなどの名に対する興味である。「子らが手を巻向山」という類の枕詞と同じく、直観的な連想に過ぎぬ。

『古今』の歌人が開いた用語法の新しい境地は一方に叙情詩の堕落を激成した。多義なる言葉を巧みに配して表裏相響かしめることが彼らの主たる関心となり、詠嘆の率直鋭利な表現は顧みられなくなった。