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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

線上閱讀和辻 哲郎《日本精神史研究(にほんせいしんしけんきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 頁

青空文庫

知らぬものである。この意味では、「物のあはれ」は世間の人情に即するものと解せられなくてはならぬ。また他の一例は夫たる帝が悲嘆に沈まれているにかかわらず、お側にも侍らで、月おもしろき夜に夜ふくるまで音楽をして遊ぶ弘徽殿のごとき人である(同一一六四)。もとより彼女は喜びあるいは苦しむ心を持たぬ人ではない。彼女が帝の悲嘆に同情せぬのは、その悲嘆が彼女の競争者たる他の女の死に基づくゆえである。しかしたとい、その悲嘆さえもが彼女の嫉妬を煽るにしろ、その嫉妬のゆえに心を硬くして、夫の苦しみに心を湿らさぬ女は、「物のあはれ」を知るとは言えない。この例によって見れば、「物のあはれ」は単に自然的な感情ではない。(たとえば嫉妬のごとき。)むしろある程度に自然的な感情を克服した、心のひろい、大きい、同情のこころである。

(二) 「物のあはれ知り顔をつくりて、なさけを見せむ」とするのは、まことに「あはれ」を知るのではない(同一一六六上)。すなわちここでは感情の誇張を斥ける。感情が純でなくては「物のあはれ」と言えぬ。

(三) 「物のあはれを知り過す」のも「物のあはれ」を知るのでない(同一一六六下)。