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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

線上閱讀和辻 哲郎《日本精神史研究(にほんせいしんしけんきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 頁

青空文庫

しかるに天平の彫刻家は、現実の人の姿の内に「理想の姿」を直視するのではない。彼らにとっては理想は決して姿となり得ないものである。姿は総じて象徴にほかならない。従ってこの象徴としての姿は、具体的な一つの現実の姿からではなく多くの現実的の姿から、理想の標準のもとに択び出され構成されたものにほかならぬ。この事実を証示する著しい例は、天平の仏菩薩像の体が嬰児の肉体から作り出されていることである(「仏像の相好についての一考察」参照)。嬰児の肉体をモデルとしてしかも堂々たる偉大性を作り出すということは、全然他に類例を見ない。作者は一つの嬰児の姿において仏の姿を直視したのではない。嬰児の体の細部はただ手段として用いられ、本質的には嬰児と縁なき象徴的な姿が構成しいだされたのである。もとより天平の作者がすでに象徴として構成された姿を幻視するということはあったであろう。しかしこの幻視された像が製作の動機となる場合には、前述のごとき写実の特殊性は一層よく理解せられると思う。

以上のごとく考えれば、天平様式の根柢には、その視覚形式を支配する仏の理念が存している、ということが明らかになる。