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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

線上閱讀和辻 哲郎《日本精神史研究(にほんせいしんしけんきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 頁

青空文庫

従って論証するにはむずかしい。だからここでは想像力活動の他の領域から、すなわち『万葉』の叙情詩から、有力な証拠を見いだそうとするのである。政治上の現象において同じき心生活の推移が認められるということは、なお形式的模倣という言葉で斥けることもできよう。しかし当時の人心の直接の流露である叙情詩に同じき律動が認められるとすれば、そこにはもう形式的模倣や知識的模倣として斥け難い確固たる心生活の事実が許されるであろう。

推古時代の心生活については、『万葉集』にはほとんど材料がない。上宮太子の「家ならば妹が手まかむ、草枕旅に臥せる、この旅人あはれ」という歌も、『紀』に録するところの、「しなてる片岡山に、飯に飢て臥せる、その旅人あはれ。親なしになれなりけめや、さすたけの君はやなき、飯に飢て臥せる、その旅人あはれ」という歌に比して、表現法が著しく新しい。推古時代にふさわしいのは、道に飢臥する現状と愛妻に抱かるる家居との対照ではなくて、目前に見るところの飢人への単純直接な愛憐の情の表出である。その意味で『紀』の歌は、孤独と飢饑の苦しみに対する同情が、驚くべく単純な露骨さで、同時に緊張した偏執の律動をもって、力強く現わされている。