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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

線上閱讀島崎 藤村《旧主人・芽生(きゅうしゅじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 149,813 字 · 302 頁

青空文庫

台処の流許に流れる水は皆な凍りついた。貯えた野菜までも多く凍った。水汲に行く下女なぞは頭巾を冠り、手袋をはめ、寒そうに手桶を提げて出て行くが、それが帰って来て見ると、手の皮膚は裂けて、ところどころ紅い血が流れた。こうなると、お島は外聞なぞは関っていられなく成った。どうかして子供を凍えさせまいとした。部屋部屋の柱が凍み割れる音を聞きながら高瀬が読書でもする晩には、寒さが彼の骨までも滲み徹った。お島はその側で、肌にあてて、子供を暖めた。

この長い長い寒い季節を縮こまって、あだかも土の中同様に住み暮すということは、一冬でも容易でなかった。高瀬は妻と共に春を待ち侘びた。

絶頂に達した山の上の寒さもいくらかゆるんで来た頃には、高瀬も漸く虫のような眠から匍出して、復た周囲を見廻すようになった。その年の寒さには、塾でも生徒の中に一人の落伍者を出した。

遽かに復活るように暖い雨の降る日、泉は亡くなった青年の死を弔おうとして、わざわざ小県の方から汽車でやって来た。その青年は、高瀬も四年手掛けた生徒だ。泉と連立って、高瀬はその生徒の家の方へ歩いて行った。

赤坂という坂の町を下りようとする途中で、広岡学士も一緒に成った。