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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
線上閱讀島崎 藤村《旧主人・芽生(きゅうしゅじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 149,813 字 · 302 頁
長いこと二人は言葉を交さないで、悄然と眺め入っていた。
やがて別れる時が来た。暫時二人は門外の石橋のところに佇立みながら、混雑した往来の光景を眺めた。旧い都が倒れかかって、未だそこここに徳川時代からの遺物も散在しているところは――丁度、熾んに燃えている火と、煙と、人とに満された火事場の雑踏を思い起させる。新東京――これから建設されようとする大都会――それはおのずからこの打破と、崩壊と、驚くべき変遷との間に展けて行くように見えた。
「ああ出て来てよかった」
と原は心に繰返したのである。再会を約して彼は築地行の電車に乗った。
友達に別れると、遽然相川は気の衰頽を感じた。和田倉橋から一つ橋の方へ、内濠に添うて平坦な道路を帰って行った。年をとったという友達のことを笑った彼は、反対にその友達の為に、深く、深く、自分の抱負を傷けられるような気もした。実際、相川の計画していることは沢山ある。学校を新に興そうとも思っている。新聞をやって見ようとも思っている。出版事業のことも考えている。すくなくも社会の為に尽そうという熱い烈しい希望を抱いている。しかしながら、彼は一つも手を着けていなかった。