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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《明治開化 安吾捕物(めいじかいか あんごとりもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,820 字 · 54 頁

青空文庫

そして、その混乱の理由は、「その日ではない」筈のことが、「その日である」ことに変った意外さに、混乱したと見ては不可いであろうか。事実はまさしく、英信にとって「その日でない」筈のことが、その日になっているのである。もう一つ、「時期」について、重大なことがあった。藤ダナの下で、英信は風守が大病であり、近々死ぬということを確信的に光子に語っているのである。これも亦フシギな謎であった。早急にとける謎ではないようだ。

新十郎は光子にきいた。

「あなたが風守さまをごらんになった時のことを、よく思いだしてきかせて下さいませんか」

光子は一度考えたが、諦め顔になって、

「特にお話申上げるような印象はございませんの。この家や宿を出発するとき、宿へついたときに、カゴを降りなさるのを、ちょッとお見かけしただけですから」

「話し声はおききになりませんでしたか。笑い声とか呻き声でもよろしいのですが」

「いいえ。ついぞお声をおききした覚えはございません」

そう言ってから光子は顔色を変えて叫んだ。

「イエ、一度だけ、お声をききました。あの怖しいお声。火焔の中でお叫びになったたまぎるような声でした」