輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

せいざ

星座

有島 武郎

線上閱讀有島 武郎《星座(せいざ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 頁

青空文庫

その寺門の左に、やや黄になった葉をつけたまま、高々とそそり立つ名物の「香い桜」。朝の光の中で園がそれを見返った時、荒くれて黝ずんだその幹に千社札が一枚斜に貼りつけられてあって、その上を一匹の毛虫が匐っていた。そんなことまでが、夏見たままの姿で園の眼の前に髣髴と現われでた。

しかもこれらのあまりといえば変化のなさすぎるような心の印象の後には、何か忌々しい動揺が起ろうとしているように思えた。実際をいうと、園は帰京せずに、札幌で静かに父の死を弔らいもし、一家の善後ということも考えてみたかったのだが「スグカエレ」という電文に背くべき何らの理由もなかった。

園は星野の手紙の下から父の手紙を取りだしてみた。封を切ろうとしたが何んのゆえともなくそれができなかった。どうもその中からは不意な事件が飛びだしてきて、準備のない園の心に、簡単に片づけることのできない混乱を与えそうでしかたがなかった。園はまた父の手紙を見つめたまま、右手の指で机の木端を敲きながら長く考えつづけた。

「とにかく今夜すぐ帰ろう」

ふっとそういう考えが断定的にその心に起った。それだけのことを決心するのに何んでこれほど長く考えねばならなかったかというようなそれは簡単な決心だった。