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とけいとまどのはなし

時計と窓の話

小川 未明

線上閱讀小川 未明《時計と窓の話(とけいとまどのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 4,803 字 · 10 頁

青空文庫

な感じがするのでした。

私の本だなには、教科書や、雑誌や、参考書などが、ごっちゃにはいっています。壁には、カレンダーがかかっているし、へやのすみには、野球のミットが投げ出してあって、べつにかざりというものがなかったから、この時計だけが、ただ一つ光って、宝物のように見えました。

母も、そう思っていたようです。しかし、母が宝物と思ったのは、多少ぼくが思ったのと、意味がちがうかもしれません。なぜなら、父と母が、家を持ったはじめのころは、まだいまの大きな柱時計もなくて、このおき時計ただ一つがたよりだったからでした。毎朝、父は、この時計を見て出勤したし、また母は、この時計を見て、夕飯のしたくをしたのでした。そして、時計は、休みなく、くるいなく、忠実に、そのつとめをはたしたのです。

けれど、ぼくが生まれて、学校へあがる時分には、いつしか、茶の間の柱へ、大きな時計がかかって、時間ごとに、いい音をたてたり、すべてご用をたすようになっていたので、この金色のおき時計は、忘れられたように、父の書斎で、書だなの上にのせられたまま、ほこりをあびていました。

私は、ほこりをあびて、止まっている時計を見るたびに、なんだか、かわいそうに思い、人間のかって気ままに対して、腹立たしくさえ感じました。