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ぎゃっこう
晩年
線上閱讀太宰 治《晩年(ぎゃっこう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 44,459 字 · 91 頁
二日目には、酔いどれの若い紳士が、一本買った。このお客は酔っていながら、うれい顔をしていた。
「どれでもいい」
女の子は、きのうの売れのこりのその花束から、白い蕾をえらんでやったのである。紳士は盗むように、こっそり受け取った。
あきないはそれだけであった。三日目は、即ちきょうである。つめたい霧のなかに永いこと立ちつづけていたが、誰もふりむいて呉れなかった。
橋のむこう側にいる男の乞食が、松葉杖つきながら、電車みちをこえてこっちへ来た。女の子に縄張りのことで言いがかりをつけたのだった。女の子は三度もお辞儀をした。松葉杖の乞食は、まっくろい口鬚を噛みしめながら思案したのである。
「きょう切りだぞ」
とひくく言って、また霧のなかへ吸いこまれていった。
女の子は、間もなく帰り仕度をはじめた。花束をゆすぶって見た。花屋から屑花を払いさげてもらって、こうして売りに出てから、もう三日も経っているのであるから花はいい加減にしおれていた。重そうにうなだれた花が、ゆすぶられる度毎に、みんなあたまを顫わせた。
それをそっと小わきにかかえ、ちかくの支那蕎麦の屋台へ、寒そうに肩をすぼめながらはいって行った。