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ちえのいちたろう
智恵の一太郎
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《智恵の一太郎(ちえのいちたろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 頁
私はこれから、一太郎君がみんなを感心させたお話のうちから、皆さんの参考になりそうなのをえらんで、一つずつ書いて行くつもりですが、今度は最初のことですから、一太郎君がまだ五年生だったころの、ごくやさしいお話をいたしましょう。みなさんのうちには、一太郎君よりも、もっともっと考えぶかい、智恵のすぐれた方もいらっしゃるでしょうが、でも、このお話は、そういう方にも、きっとおもしろいだろうと思います。
それは、一太郎君がもう一月ほどで五年をおわって、六年に進もうという、ある春の日の夕方のことでした。お家から三百メートルほどはなれたところにある、広い原っぱで、一太郎君は五年生の木村良雄君と、球投げをして遊んでいました。一太郎君は考えぶかくはあるけれど、ひっこみ思案で、部屋にばかりくすぶっているような少年ではありません。頬が林檎のようにつやつやして、目がクリクリと丸くて、いつもにこにこしていて原っぱを走りまわったり、野球をしたりするのが大すきだったのです。
「オーイ、こんどは、もうれつな直球だよ」
良雄君は、大声にさけびながら、いきおいこめて、球を投げました。ところが、良雄君があまり力をいれすぎたものですから、球は、一太郎君の、はるか頭の上を飛びこして、うしろの池にボチャンとおちてしまいました。