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ちえのいちたろう
智恵の一太郎
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《智恵の一太郎(ちえのいちたろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 頁
「良ちゃん、そんな暴投しちゃだめじゃないか」
一太郎君は良雄君にどなっておいて、いそいで池のふちにかけつけ、ゴムまりを拾おうとしましたが、まりは池のふちから二メートルもはなれた水の上に、ポッカリと浮かんでいて、長い棒でもなければ、とても取ることができないのです。
良雄君もかけつけて来て、池のふちにしゃがんで、両手で水をこちらにかきよせてみましたが、そんなことをすれば、球はかえって向こうの方へ行ってしまうばかりです。靴をぬいで、水の中にはいって、球のところまで行けばよいのですが、そこはどろ沼のようなきたない池でしたから、水の中にはいろうものなら、いきなりズブズブと底のどろの中へ足をふみこみ、ズボンも上着もどろまみれになってしまいます。どう考えても、長い棒がなくては、球はとれないのです。二人はしばらく、顔見合わせて立っていましたが、やがて良雄君が、
「僕、家へ行って竿竹もってくるから、まっててね」
といって、かけ出して行きました。良雄君のお家の方が、一太郎君のお家よりも近いからです。
それから三分ほどたって、良雄君は長い竹をかついで、息をきらして、池のそばへかけて来ましたが、そこに立ってにこにこ笑っている一太郎君を見ますと、びっくりして立ちどまってしまいました。