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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《智恵の一太郎(ちえのいちたろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 頁

青空文庫

「いや、この子には、時々おどろかされるよ。こんな厚紙に穴をあけただけで、老眼鏡で見るように、新聞の字がよく見えるのだ」

「どれどれ、私にも一つ見せて下さい」

お父さんは、その画用紙を目にあてて、新聞を近よせ、しばらくのぞいておいでになりましたが、

「ふーむ、なるほど、拡大鏡で見るように、大きく見えますね。一太郎、これはお前が考えついたのか」

と感心したように、おたずねになりました。

「ええ、僕が考えたんです」

「どうして考えついたか話してごらん。お父さんも、こんな手軽な眼鏡があろうとは、思いもつかなかったからね」

そこで、一太郎君は、この不思議な眼鏡を考えつくまでのすじみちを、次のように話しはじめました。

「僕、小さい時、目を細くして、明かるいところを見ていたら、目の前に、太い線のようなものが、幾本も見えたんです。僕、びっくりしてしまったんです。

よく考えてみたら、それが僕のこのまつ毛だったのですよ。

それから、僕、いろんなものをためしてみたんです。目を糸のように細くして、そのすぐ前に、指の先を出すと、指紋が拡大鏡で見るようにはっきり見えるのです。僕、それが不思議でたまらないので、幾度もためしてみたのです。