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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《智恵の一太郎(ちえのいちたろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 頁

青空文庫

昼間道で出あった時、この前よりも、もっとおもしろい実験をして見せるからと、さそわれたからです。

お庭の方へはいって行きますと、高橋さんは縁側に腰をかけ、手に、この間の晩の画用紙の筒を持って、にこにこしながら、一太郎君を待っていました。

「やあ、よく来たね。今日は、もう一度君をびっくりさせてあげようと思って、ちゃんと用意がしてあるのだよ。だが、まずあの月をごらん。ほら、むこうの家の屋根の上だよ」

高橋さんにいわれて、その方をふりむきますと、そこに、とても大きな月が出ていました。

まだ暮れきらぬ夕ぐれの、うす明かるい空に、朱色をした大きな大きな月が、ぼうっと浮かんでいました。いつも空の上の方で見る銀色の月にくらべると、五六倍もあるかと思われる大きさです。

「わあ、でっかい月だなあ。まるで赤いお盆のようですね」

「大きいだろう。この間ここで見た月とは、まったく別もののように見えるね。なぜだろう。なぜ、こんなに大きく見えるのだろう」

「それは、出はじめだからでしょう。月でも太陽でも、出はじめには、みんな大きく見えるのでしょう」

「そうだね。出はじめは大きく見える。