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くらがりのおとまつ
暗がりの乙松
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《暗がりの乙松(くらがりのおとまつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,992 字 · 25 頁
手を読む暇もなく三次は角道を止めた。
廊下をこっちへ、がやがやと人声が近づいて来る、部屋をひとつひとつ検めているらしい、男は手酌で一杯やると、
「うーむ、止めたか」
と仔細らしく腕組をした。そこへどかどかと跫音が近づいて来て、
「ええ御免くださいまし」
声をかけながら障子を明けた。宿の亭主をはじめ七八人の男たちが、向う鉢巻に尻端折り、六尺棒を持ってずらりと並んだ。
「おやおや、たいそうな出立だな」
男は振返って、「何かあったのかえ――?」
「お騒がせ申して相済みません、いま向うの離室へ泥棒が入りましたので、順繰りに見回っているところでございますが」
「そいつぁ物騒な、何か盗られなすったか」
「いいえ、幸いとお客様が早く気付いたので、べつに盗まれた物はありませんが、どうやら外から入った賊ではないようすゆえ、念のために検めておりますので」
「そうかえ、こっちゃあまたさっきから将棋に夢中で何も知らなかった」
男は部屋を指さして、「かまわないからこの部屋も検めていっておくれ」
「とんでもない、梅田屋の旦那のお部屋まで検めるには及びません、ちょっとお耳に入れていただいたばかりで――へえ御免くださいまし」