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こうや
曠野
小川 未明
線上閱讀小川 未明《曠野(こうや)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 2,963 字 · 6 頁
」と、松の木は、考えるのでありました。
八月の赫灼たる太陽の下で、松の木は、この曠野の王者のごとく、ひとりそびえていました。
ある日のこと、一人の旅人が、野中の細道を歩いてきました。その日は、ことのほか暑い日でした。旅人は野に立っている松の木を見ますと、思わず立ち止まりました。
「なんだか、見覚えのあるような松の木だな。」
彼は、子供の時分、村はずれの原っぱに立っていた、そして、その下でよく遊んだ松の木を思い出したのでした。
「よく似た木もあったものだ。やはり、片方の技が折れていたっけが。」
村の松の木の片方の枝は、冬、大雪が降ったときに折れたものでした。旅人は、なつかしそうに、ひじょうにそれとよく姿の似ている、松の木の下にきて休みました。木の影は、こうして慕い寄った旅人をいこわせるには十分でありました。目の前には、いろいろの雑草の花が、はげしい日光を浴びながら咲いて、ちょうや、はちが飛び集まっているのがながめられましたけれど、ここだけは、まったく日が陰って、広い野を越えて吹いてくる風は、汗の引き込むほど涼しかったのでした。
「そうだ。遠くへ遊びにいっても、帰りに、あの木の頭が見えると安心したものだ。