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つきのまつやま

月の松山

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《月の松山(つきのまつやま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,451 字 · 41 頁

青空文庫

馬では跟けるわけにいかないから、このまえのときは先廻りをさせ、城下の東木戸で待つように命じた。

「弥六はずっと待っていたけれど、とうとう姿をみせなかったと申しますの」と桂は云った、「馬で街道をゆくことは慥かだから、木戸で待っていればみつからない筈はないんですけれど」

「すると城下町ではないのかもしれませんね」

「わたくしもうたくさん、もう諦めることにしました」と桂は云った、「慥かめなくってもおよそわかります、二月から数えてもう九度もでしょう、桂がいくらぼんやりでも、なにがあるかくらいおよそ想像がつきますわ」

「私はこう思うんです」

泰二郎は云いかけて口ごもった。桂が「どうお思いなさるの」と訊いた。するとまた、彼女の躯から香料が匂った。泰二郎はその午後の(道場での)出来事を話した。

「わたくし信じられませんわ」と桂は首を振った、「奉納試合のためだなんて、わたくしには信じられません」

「私はこう思うんです」泰二郎が云った、「宗城さんはあの晩のことを誤解している、私たちが宗城さんのことを心配して、そのことで話しあっていたと云えばいい、けれどそれはあの場では云えなかったし、あとで説明しようとしても聞かなかった、聞いても弁解だと思われたかもしれない――、たぶん、そこにいろいろな原因があるんだと思うんです」