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きのこせっぽう
木の子説法
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《木の子説法(きのこせっぽう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,107 字 · 34 頁
けれども、五十歩にたりぬ向うの辻の柳も射ない。のみならず、矢竹の墨が、ほたほたと太く、蓑の毛を羽にはいだような形を見ると、古俳諧にいわゆる――狸を威す篠張の弓である。
これもまた……面白い。
「おともしましょう、望む処です。」
気競って言うまで、私はいい心持に酔っていた。
「通りがかりのものです。……臨時に見物をしたいと存じますのですが。」
「望む所でございます。」
と、式台正面を横に、卓子を控えた、受附世話方の四十年配の男の、紋附の帷子で、舞袴を穿いたのが、さも歓迎の意を表するらしく気競って言った。これは私たちのように、酒気があったのでは決してない。
切符は五十銭である。第一、順と見えて、六十を越えたろう、白髪のお媼さんが下足を預るのに、二人分に、洋杖と蝙蝠傘を添えて、これが無料で、蝦蟇口を捻った一樹の心づけに、手も触れない。
この世話方の、おん袴に対しても、――(たかが半円だ、ご免を被って大きく出ておけ。)――軽少過ぎる。卓子を並べて、謡本少々と、扇子が並べてあったから、ほんの松の葉の寸志と見え、一樹が宝生雲の空色なのを譲りうけて、その一本を私に渡し、