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きそおんたけのりょうめん
木曽御嶽の両面
吉江 喬松
線上閱讀吉江 喬松《木曽御嶽の両面(きそおんたけのりょうめん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,819 字 · 32 頁
寺の鐘楼が高く家々の上に聳えている。町の響も聞えて来るような気がする。――私は少年の時分、私の家の隠居家に来ていた婆さんのことを思い出だした。信濃へはよく飛騨女が流れて這入って来た、飛騨女は皆色が白く、顔立ちが調っている。私の郷里に近い町には廓があって、その廓へは飛騨女が多く来ていた。その婆さんもその廓へ来ていたのが、年老ってから私の家の隠居家へ雇われていたのであった。暇さえあれば高山の町の話をして聞かせた。照蓮寺の御堂、高山八幡の宮とか、私の胸へは婆さんから聞かせられた幼時の記憶が次第に浮んで来た――物語の国へでも這入って行くような思いがする。
町の入口何処の田舎の町へ行って見てもそうだが、狭い道の両側の家の屋根は低く何処か黒いような影が伴っているようで、荷車、馬、子供、犬などが忙しそうにしているが、妙に寂しい、そして一種の懐しい旅情を覚えさせるものだ。
高山の町は思ったよりも整然と調った這入る者の気を引しまらせるような、生気の充ち充ちた町である。真中に川が流れていて、その川に沿って賑かな通りが縦横に出来ている。飛騨には大きな鉱山がいくつもあって、その鉱山の関係者が皆東京から来るので、高山の町はなかなか裕福だと聞かされた。