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もくばはまわる

木馬は廻る

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《木馬は廻る(もくばはまわる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,819 字 · 20 頁

青空文庫

「ここはお国を何百里、離れて遠き満洲の……」

ガラガラ、ゴットン、ガラガラ、ゴットン、廻転木馬は廻るのだ。

今年五十幾歳の格二郎は、好きからなったラッパ吹きで、昔はそれでも、郷里の町の活動館の花形音楽師だったのが、やがてはやり出した管絃楽というものに、けおされて、「ここはお国」や「風と波と」では、一向雇い手がなく、遂には披露目やの、徒歩楽隊となり下って、十幾年の長の年月を荒い浮世の波風に洗われながら、日にち毎日、道行く人の嘲笑の的となって、でも、好きなラッパが離されず、仮令離そうと思ったところで、外にたつきの道とてはなく、一つは好きの道、一つは仕様事なしの、楽隊暮しを続けているのだった。

それが、去年の末、披露目やから差向けられて、この木馬館へやって来たのが縁となり、今では常傭いの形で、ガラガラ、ゴットン、ガラガラ、ゴットン、廻る木馬の真中の、一段高い台の上で、台には紅白の幔幕を張り廻らし、彼等の頭の上からは、四方に万国旗が延びている、そのけばけばしい装飾台の上で、金モールの制服に、赤ラシャの楽隊帽、朝から晩まで、五分毎に、監督さんの合図の笛がピリピリと鳴り響く毎に、「ここはお国を何百里、離れて遠き満洲の……」