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ほんじょまつざかちょう

本所松坂町

尾崎 士郎

線上閱讀尾崎 士郎《本所松坂町(ほんじょまつざかちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,622 字 · 55 頁

青空文庫

その新邸の建築費用は二万五千五百両で、これは一切、上杉家から支出されることになっていた。このとき二十一歳になった一学は、左兵衛の剣術指南役を仰せつかり、邸内に独立したひと棟を拝領した。こうなると自然、身のまわりの世話をするものも必要になり、ふと思いだしたのが幼な馴染のお絹のことであった。

何よりも彼女の消息を知りたかったが、しかし、それと口に出しては言えず、一日も早く帰郷の日の来るのを待っているうちに、二三年が瞬くうちにすぎてしまった。

元禄十四年、三月――江戸城では恒例の勅使を迎えることになり、このとき六十一歳になった上野介は、最後の御奉公を終えてすぐ家督を左兵衛にゆずり、吉良荘へ隠遁することになっていた。一学は横須賀出身であるから、本来ならば上野介に随伴させるべきであるが、しかし、左兵衛にとってお側はなれずの家来であるから、たぶん江戸屋敷へ残ることになるだろうと噂されていた。

その頃から一学は茶屋酒の味をおぼえはじめた。相棒は山吉である。酒の味がわかるにつれて酒量はぐいぐいとあがってきた。すでに二十四歳である。

「ああ。おれなぞは時代をとりちがえて生れてきたのだ――戦国の世に生れていたらなア」