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ほんだな
本棚
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《本棚(ほんだな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,015 字 · 8 頁
内容としての化学は、かなり初歩が筆記されているらしいのに、それを書いている字ばかりはいやに大人らしく立派で、そこにもまざまざと明治二十年代の青年の生活がうかがわれる。
父は詩をつくることと篆刻が少年時代の趣味だったそうで、楠の小引出しにいろいろと彫った臘石があったのを私も憶えている。その少年が十六のとき初めて英語の本を見て、なかの絵が出て来る迄、さかさに見ていたのが分らなかったということも聞いている。
明治二十五年の『女学雑誌』と云えば、元年生れであった父は、二十五歳の青年になっていたわけである。進歩的な気質の青年らしく、父は『女学雑誌』などをも読んでいたのだろうか。二人の妹があったから、その妹たちに、その雑誌のことを話したり、読ませたりもしただろうか。もし若い父が読んだのなら、表紙裏の抜き書きは、私たちに一層親愛な暖さを感じさせる。そこには、仄かに父が自分の結婚や家庭や子供たちの教育について抱いていた若々しい希望というようなものが語られているから。
だけれども、もしかしたら、これを書いたのは叔父の省吾という人ではなかったかしら。この人の字癖を知らないけれど、父とは二つか三つ年下の弟で、高校時代にふらりと支那へ行って、そこで一年ほど何かの学校の先生になっていたことがあるというような気質の人であったそうだ