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いなかがえり

林芙美子随筆集

林 芙美子

線上閱讀林 芙美子《林芙美子随筆集(いなかがえり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 58,157 字 · 118 頁

青空文庫

横町は気味の悪いものであった。その頃はまだ手紙を出すのに東京市外上落合と書いていた頃で、私のところは窪地にありながら字上落合三輪と呼んでいた。その上落合から目白寄りの丘の上が、おかしいことに下落合と云って、文化住宅が沢山並んでいた。この下落合と上落合の間を、落合川が流れているのだが、(本当は妙正寺川と云うのかも知れぬ)この川添いにはまるで並木のように合歓の木が多い。五月頃になると、呆んやりした薄紅の花が房々と咲いて、色々な小鳥が、堰の横の小さい島になった土の上に飛んで来る。

まず引越しをして来ると、庭の雑草をむしり、垣根をとり払って鳳仙花や雁来紅などを植えた。庭が川でつきてしまうところに大きな榎があるので、その下が薄い日蔭になりなかなか趣があった。私は障子を張るのが下手なので、十六枚の障子を全部尾崎女史にまかせてしまって、私は大きな声で、自分の作品を尾崎女史に読んで聞いて貰ったのを覚えている。尾崎さんは鳥取の産で、海国的な寂しい声を出す人であった。私より十年もの先輩で、三輪の家から目と鼻のところに、草原の見える二階を借りてつつましく一人で住んでいた。