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ますおとし

枡落し

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《枡落し(ますおとし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 33,765 字 · 67 頁

青空文庫

それは意識しない独りごとであり、頭の中は千太郎のことでいっぱいだった。あの人をみすてるわけにはいかない、それは人間の道に外れたしかただ。無実の罪だということが立証されて、牢から出られるようになったら、あの人の性分も変るかもしれない。そしてもとの、ぐれだすまえのような、よく稼ぐあたりまえな人間になってくれるかも、しれないではないか、――もちろんその逆も考えられる、ぐれたやくざな、悪いとしつきは長かったし、無実の罪で牢へ入れられた恨みも深いことだろう、出てきたらもっと悪くなることもないとはいえない。いや、あの性分がよくなって出て来るよりも、その反対のほうがいちばん現実的だ、と思わなければならないだろう。

――良人がぐれだしたとしたら、いのちを賭けてもいさめ励ますのが、妻のつとめではないか。

なにがし壱岐守とかいう町奉行の言葉が、そのままではないかもしれないが、おみきの記憶にまたよみがえってきた。そうだ、いのちを賭けても。それでいいのなら、あの人が悪いままで帰って来、まえのように乱暴をするようだったら、あたしがあの人を殺し、自分も死ねばいいのだ。

「あの人を殺す、どうやって」