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けいまのげんそう
桂馬の幻想
線上閱讀坂口 安吾《桂馬の幻想(けいまのげんそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,784 字 · 28 頁
「ヨー。ベッピン、牛のクソふむなア」
とはやしたてる野良の年寄もいた。娘教祖はせせら笑って、
「虫ケラどもが!」
「田舎にも虫ケラが多いじゃないか」
「日本中、虫ケラだらけさ」
平然たるものであった。山上の茶店へ来てみると、表の茶店は戸締りが施されていて、接待のため予定の休業と見うけられた。裏のクグリから屋内へはいると、タタミ、否、ムシロをしいた部屋は一間しかない。その部屋の柱に、木戸が荒ナワでガンジガラメにいましめられている。
「いま戻ったよ」
と娘教祖は帰宅の挨拶に木戸の額に平手打をくらわせて、
「さ、お前はこッちへおあがり。お前を煮て食うとは云わないよ。なーに。これは普通のことでね。毎日ではないが、よくやることさ。昨日はひどかった。お前が帰ったあとでさ。薪ザッポウくらわしてやったよ。顔にはケガはさせないがね。お前にくだらないことを喋りちらしやがったからさ。オレは見とおしさ。みんな耳にきこえてくる。顔にもちゃんと書いてあるのがお前たちには判らないだけさ。お前はそこに坐って見ていなさい」
野村を指定席に坐らせておいて、娘教祖は木戸の前に立った。
「ほら。ほら。