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くわのきものがたり

桑の木物語

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《桑の木物語(くわのきものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 39,815 字 · 79 頁

青空文庫

「だってあんなに仲がよかったのに……」

そんな会話が幾たびかあったが、やがて悠二郎は本気に怒った声でこうどなった。

「いいかげんにしねえか。こんどおれのまえであいつの名を云ったらぶん撲るぞ」

おみつはあっけにとられ、まじまじとこちらの顔を見まもった。そしてなにかわけがあると察したのであろう、それからは信さんの「の」の字も口にしなかった。

二年めの夏におみつは子を産んだ、女の子で、仙吉が「つならびにしよう」と云い、おなつと名をつけた。そのときちょうどいいきっかけだからと、仙吉夫婦は隠居して、家をそっくり悠二郎とおみつに譲った。――舟仙に猪牙船が七はいに釣舟が五はい、ほかに屋形船が三艘あり、川筋でも繁昌することではひけをとらなかった。

おなつが五つの年に長男が生れ、おみつの望みで勇吉と名づけた。

「あんたのような気性に育って貰いたいの、もういちどゆうちゃんて呼べるのもうれしいわ、ねえ、いい名でしょ」

おみつはしおのある眼で、良人の顔をじっとみつめた。悠二郎はてれ、眼をぱちぱちさせて脇へ向いた。

「でもあんたのせっかちと、わる悪戯だけはごめんだわね、年じゅう泥んこの瘤だらけ傷だらけ、出れば喧嘩というのもまっぴらだわ」