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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

線上閱讀海野 十三《棺桶の花嫁(かんおけのはなよめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 頁

青空文庫

行ってみると、これから横浜の税関まで行ってくれということだった。

杜は一件書類を折り鞄のなかに入れて、省線電車の乗り場に急いだ。そして正午まえの東京を後にしたのだった。

九月一日の午前十一時四十八分、彼は横浜税関の二号倉庫の中で、あの有名なる関東地方の大震災に遭った。

そのとき彼が一命を助かったということは、まさに奇蹟中の大奇蹟だった。あの最初の大動揺が襲来したときに、この古い煉瓦建の背高い建物は西側の屋根の一角から、ガラガラッと崩れはじめた。彼は真青になったが、前後の見境もなく、傍にあった石油缶の空き函を頭の上にひっ担ぐと、二十間ほど向うに見える明るい出入口を目がけて、弾丸のように疾走した。

大地は荒海のように揺れていて、思うようには走れなかった。出入口のアーチの上からは、ザザーッと、滝のように土砂が落ちてくるのが見えた。危い。その勢いでは、アーチをくぐった途端に、上からドッと煉瓦の魂が崩れおちてきそうだった。しかし彼は一瞬間もひるまず、函を両手でしっかり掴んだまま、アーチの下をくぐりぬけた。

すると頭上に天地が一時につぶれるような音がして、彼の頭はピーンといった。