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しいのき

椎の木

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《椎の木(しいのき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,870 字 · 52 頁

青空文庫

行ってみると、川村さんは熱をだして寝ていた。痩せた頬に髭がもじゃもじゃはえていた。

「おうちだったんですね。留守だというんで、時間をつぶすのに困りました。」

良一が不平そうに云うのを、川村さんはほほえんできいていた。

「うむ、誰にでも、留守だから電話をしろと、そういうことになってるんだ。面倒くさい者には会わないことにしてるものだから……。」

良一は苦笑した。――元来、川村さんは電話がきらいで、こんな不都合なものはないと不平を云っていた。戸締りをしておいても、夜遅くでも、電話というやつは、いきなりりりんととびこんできて、話しかける。家の中を往来と同じものにするというのだった。そんな嫌なものならやめたらいいでしょう、というと、それでも使いようによっては人間以上に役にたつ、というのだった。病気の時なんかうまく使ってるというわけなのであろう。

そこへ若い女が茶をくんできた。一度も見たことのない女で、それも、普通の女ではなさそうだった。洋髪に結った髪がばかに綺麗にさらっとカールしていて、黒襟のかかったはでなお召の着物をきていた。襟頸がすっきりとぬけて、顔の皮膚が不自然になめらかだった。