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そり
橇
黒島 伝治
線上閱讀黒島 伝治《橇(そり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,663 字 · 24 頁
」
「……?」
大隊長にはだしぬけで何も見えなかった。
「左手の山の麓に群がってるのは敵じゃないかね。」
「は。」
副官は双眼鏡を出してみた。
「……敵ですよ。大隊長殿。……なんてこった、敵前でぼんやり腹を見せて縦隊行進をするなんて!」絶望せぬばかりに副官が云った。
「中隊を止めて、方向転換をやらせましょうか。」
しかし、その瞬間、パッと煙が上った。そして程近いところから発射の音がひびいた。
「お――い、お――い」
患者が看護人を呼ぶように、力のない、救を求めるような、如何にも上官から呼びかける呼び声らしくない声で、近松少佐は、さきに行っている中隊に叫びかけた。
中隊の方でも、こちらと殆んど同時に、左手のロシア人に気づいたらしかった。大隊長が前に向って叫びかけた時、兵士達は、橇から雪の上にとびおりていた。
五
一時間ばかり戦闘がつづいた。
「日本人って奴は、まるで狂犬みたいだ。――手あたり次第にかみつかなくちゃおかないんだ。」ペーチャが云った。
「まだポンポン打ちよるぞ!」
ロシア人は、戦争をする意志を失っていた。彼等は銃をさげて、危険のない方へ逃げていた。