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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 頁

青空文庫

そのあと、玄関で、塾長と理事長との間に小声でつぎのような問答がかわされたのを、次郎はきいた。

「行事はいつもの通りにすすめていくつもりです。」

「むろん。」

「さけ得られる摩擦はなるだけさけたいと思っていますが……。」

「そう。それはできるだけ。……しかし、それも塾の方針があいまいにならない程度でないと……」

「それは、いうまでもありません。」

やがて午後の懇談会の時刻になった。合い図はすべて、事務室の前につるした板木――寺院などでよく見るような――を鳴らすことになっていたが、次郎がその前に立って木槌をふるおうとしていると、荒田老の例の付き添いの男――鈴田という姓だった――が、塾長室から急いで出て来てたずねた。

「懇談会はどこでやるんです。」

「さっき食事をした畳敷きの広間です。」

「あ、そう。」

と、鈴田はすぐに塾長室に引きかえした。そして、次郎がまだ板木を打っている間に、荒田老の手を引いて広間にはいって行った。

次郎が板木を鳴らしおわって広間にはいったときには、荒田老はもう窓ぎわに、鈴田とならんでどっしりとすわりこんでいた。次郎が床の間のほうを指さして、

「どうぞこちらに。