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うたごえよ、おこれ

歌声よ、おこれ

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《歌声よ、おこれ(うたごえよ、おこれ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,340 字 · 11 頁

青空文庫

開放と不安との間に、橋の架けかたを知らされずに近代を通ってきた正直な日本の幾千万の人々が、ひしめいているのである。

文学が、こういう未曾有の歴史の場面において、負っている責任はきわめて大きい。そしてまた、文化・文学の活動にたずさわる人々の胸中には、言葉にあらわしきれない未来への翹望がある。それにもかかわらず、なんだか、前進する足場が思うように工合よく堅くない。すべり出しの足がかりがはっきりしない感じがあるのではなかろうか。自身にとっても、十分新らしかるべきものと予想されている日本の今日の文学を、どこから本質的に新しくしてゆけばよいのか、わかっているようでわからないのが、本当のところらしく見うけられる。

日本の文学が、今日そういう足の萎えた状態にあることは、まったく日本の明治文化の本質の照りかえしである。明治維新は、日本において人権を確立するだけの力がなかった。ヨーロッパの近代文化が確立した個人、個性の発展性の可能は、明治を経て今日まで七十余年の間、ずっと封建的な鎖にからめられていた。したがって、西欧の近代文学の中軸として発展してきた一個の社会人として自立した自我の観念も、日本ではからくも夏目漱石において、不具な頂点の形を示した。