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うたあんどん

歌行灯

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《歌行灯(うたあんどん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,094 字 · 72 頁

青空文庫

「へい、御飯は召あがりますか。」

「まず酒から飲みます。」

「あの、めしあがりますものは?」

「姉さん、ここは約束通り、焼蛤が名物だの。」

七

「そのな、焼蛤は、今も町はずれの葦簀張なんぞでいたします。やっぱり松毬で焼きませぬと美味うござりませんで、当家では蒸したのを差上げます、味淋入れて味美う蒸します。」

「ははあ、栄螺の壺焼といった形、大道店で遣りますな。……松並木を向うに見て、松毬のちょろちょろ火、蛤の煙がこの月夜に立とうなら、とんと竜宮の田楽で、乙姫様が洒落に姉さんかぶりを遊ばそうという処、また一段の趣だろうが、わざとそれがために忍んでも出られまい。……当家の味淋蒸、それが好かろう。」

と小父者納得した顔して頷く。

「では、蛤でめしあがりますか。」

「何?」と、わざとらしく耳を出す。

「あのな、蛤であがりますか。」

「いや、箸で食いやしょう、はははは。」

と独で笑って、懐中から膝栗毛の五編を一冊、ポンと出して、

「難有い。」と額を叩く。

女中も思わず噴飯して、

「あれ、あなたは弥次郎兵衛様でございますな。」

「その通り。……この度の参宮には、都合あって五二館と云うのへ泊ったが、内宮様へ参る途中、古市の旅籠屋、藤屋の前を通った時は、前度いかい世話になった気で、薄暗いまで奥深いあの店頭に、真鍮の獅噛火鉢がぴかぴか