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ぶどうむもん
武道無門
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《武道無門(ぶどうむもん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,130 字 · 24 頁
「倒れているのは勘兵衛であろう」忠善はまだ笑いながら云った、「だが、あの立っているのは何者だ」
「はっ、宮部小弥太でございます」
「宮部小弥太、……あの評判の臆病者か」忠善も小弥太の噂は耳にしていたのである、然し当人を見るのはそれが初めてだった、「そうか、あれが……臆病者の小弥太か」なかば呟くように云ったが、とつぜんなにか思いついたという風に振返った。
「吉之丞、そのほう行って小弥太をこれへ呼んでまいれ」
「かしこまりました」近習の一人が直ぐに馬を駆って行った。
忠善は乗馬を供の手に預け、なだらかな丘の斜面の方へ下りていった。待つほどもなく、吉之丞に伴れられて小弥太がやって来た。彼は主君の姿を見るなり、身を震わせながら草の上に平伏した。
忠善は二名の近習を遠ざけた。
「小弥太と申すか」
「……はっ」彼はわなわなと震えた。
「許す、近うまいれ、近う」小弥太は僅かに膝をにじらせたばかりである、忠善は自分の方から近寄って行った、「いま勘兵衛と果し合をしていた様子だが、どんな仔細で致したか申してみい、許す、誰もおらぬから即答でよいぞ」
「はっ、おそれいり奉りまする」
小弥太はひどく震える声で、まるで蚕が糸を吐くような調子で始終を語った。