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はぐるま

歯車

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《歯車(はぐるま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,267 字 · 52 頁

青空文庫

僕はもうその時にはちょっと帽をとったぎり、彼を後ろに歩き出していた。先生、A先生、――それは僕にはこの頃で最も不快な言葉だった。僕はあらゆる罪悪を犯していることを信じていた。しかも彼等は何かの機会に僕を先生と呼びつづけていた。僕はそこに僕を嘲る何ものかを感じずにはいられなかった。何ものかを?――しかし僕の物質主義は神秘主義を拒絶せずにはいられなかった。僕はつい二三箇月前にも或小さい同人雑誌にこう云う言葉を発表していた。――「僕は芸術的良心を始め、どう云う良心も持っていない。僕の持っているのは神経だけである」……

姉は三人の子供たちと一しょに露地の奥のバラックに避難していた。褐色の紙を貼ったバラックの中は外よりも寒いくらいだった。僕等は火鉢に手をかざしながら、いろいろのことを話し合った。体の逞しい姉の夫は人一倍痩せ細った僕を本能的に軽蔑していた。のみならず僕の作品の不道徳であることを公言していた。僕はいつも冷やかにこう云う彼を見おろしたまま、一度も打ちとけて話したことはなかった。しかし姉と話しているうちにだんだん彼も僕のように地獄に堕ちていたことを悟り出した。